前提条件:土地…東京都山手の繁華街はずれ、住宅団地・小学校に近い場所 (津波・崖崩れ・液状化現象などは起きない地勢・地形といえる) 建物…築5年、鉄骨・スレート構造、2階建て。中規模の店舗 (地震で建物の倒壊はない。客用エレベーターはなくエスカレーター) 店舗…食品・雑貨をはじめ衣料・台所用品・図書文房具など (売り場裏側に厨房・事務室・倉庫・トイレなど) 商品…移設可能の商品棚・商品ケース、キャスターつき商品台 (地震による棚や商品の転倒・落下・逸走は十分に予想される) 時期…200I年4月13日(月)、午前15時30分。通常の客入り (通労を歩く人、商品を選ぶ人、レジ前に並ぶ人……) 地震…房総沖の大地震、本震は震度5強(250ガル)約40秒間 (初めは小さな揺れ、次いで大きな揺れ。建物や器物は激動) お客(A):常連客の顧客(A)は30歳代の家庭の主婦で幼稚園生の長男を連れて、店の 買い物籠を手にして、いつもの買い物をしていた。1階の菓子コーナーでおや つ用の煎餅を選んでいた。 ガタゴトッ…と足元と目先の棚の揺れるのを感じた。「アッ、地震だ!」 「地震だわ!」二人は思わず身をすくめ抱き合った。自身は地震であるが特 に何かが落ちたり倒れたりすることもなく、店内は低いざわめきだけであっ た。 「ホッ」としかけたときに轟音とともにグラグラッと激しい揺れが襲って きた。停電で店内は薄暗くなった。商品棚は床から浮きながら激しく前後に 揺れ、棚の商品は弾かれるように飛んだ。二人の顔や体に菓子袋が当った。 母親は思わず手を伸ばして棚を押さえようとしたが激しい揺れに諦めて、子 供の手を引いて棚の前から身をかわした。その瞬間にスチール製の商品棚は 前に倒れた。二人が元の位置にいたら強く頭部を打撃されたことだろう。 店内は建物器物の軋みや激突音と顧客の阿鼻叫喚で地獄模様であった。顧 客(A)の二人は倒れた棚の横で立ちすくんでいた。やがて揺れが収まり、 足の踏み場もなく埃が立ちこめる中を出口まで急いだ。店員の誘導はなかっ た。出口に行くまでに何人かの怪我人を見た。20メートルほどの距離が長く 感じられた。 顧客(B) :通りすがりの顧客(B)は60歳ぐらいのサラリーマンで、2階の図書コーナ ーの通路際で週刊誌を立ち読みしていた。 ガタゴトッと揺れた時に、「こりゃ地震だ…」と辺りを見回しながら雑誌 を持ったまま、台所用品コーナーの方に歩いて行った。そのとき、グラグラ ッと大揺れが襲ってきた。咄嗟に持っていた雑誌で頭を覆った時に照明が消 え、傍らのキャスターつき商品ケースが壁に弾かれて顧客(B)の右腰に激突 してきた。 「あ痛っ」の声も出ずにその場にうずくまった。右足がしびれて立てない。 腰骨にひびが入ったのかもしれない。あたりは小物商品が乱舞して恐ろしか った。そのときどこかで女性の悲鳴が聞こえた。それを合図にしたかのよう に店内の顧客達はわめき出し、走り出し、収拾がつかなくなった。 ようやく揺れも収まり彼は「ホッ」とした。次になにが起きるか分らない のでとにかく店外に出ようとしたが足が利かない。しゃがみこんだまま両手 で漕ぐようにして器物が散乱する床面を滑りながら進みだした。その直ぐそ ばを何人もの人が通り過ぎたが、誰一人手を差し伸べるものはいなかった。 階段のところまで来て行き詰った。そこで大声で助けを呼んだ。しばらくし て男性店員が来てくれ、肩を貸してくれたおかげで何とか店外に出ることが 出来た。 店員(A):店員(A)は1階レジスター担当の50歳代の女性である。5台並んだレジの真ん 中の受け持ちで、いつものようにキーを叩いていた。 ガタゴトッと揺れを感じた瞬間手が止まった。清算中の女性顧客が「地震! 」と叫んだ。「どうしようか…」と思っていたら揺れが止み、ホッとしてい たらグラグラッと激震があたりを襲った。カウンターの上の買い物籠はずり 落ち、レジの引き出しは出たり引っ込んだりし、後ろの商品棚から物が降っ てきた。突然の停電と共に顧客達の悲鳴が湧いた。狭いカウンターの中から 出ようとしても出られず、その場にうずくまり、目を閉じ、頭を抱え込んだ。 何か小物が体に当ったり床に落ちてきた。床から突き上げてくる衝撃は胃や 心臓ゆすり、器物が激突する音や悲鳴は耳をつんざき、頭の中は真っ白くな った。 大揺れが収まってからも、「顧客誘導」という言葉は全く思い浮かばなか った。確かに防災訓練を受けたことはある。火災での誘導では自分のみは安 全で、顧客も自分の指示に従ってくれる状況では、メガホン一つで何十人の 顧客を誘導できる。しかし、自分自身が大揺れに見舞われ、建物や器物の震 動を見、悲鳴を聞いて…心臓が口から出そうになり…他人事でなくなった状 況で、「顧客誘導」なんて出来る状態ではなかった。レジはそのままで顧客 の列に混じって店外に逃れた。 行動診断・建物自体の崩壊はなくても、商品棚や商品の落下・転倒・逸走は避けられない。 ・訓練されていない人、見知らぬ同士の顧客、アルバイト店員…の行動が問題。 ・「慌てるな」「落ち着いて行動せよ」「店員の指示に従え」…は机上の空論。 ・器物落下は必至で、女性が多いことからパニックが起きやすいといえよう。 ・デパート、スーパーマーケット、コンビニエンスでは物的対策を徹底する。 ・建物部材:壁・窓・天井・照明などが剥離・損壊して落下しないようにする。 ・商品棚・ケース:移設が容易な方法で壁・柱に固定・連結する対策を講じる。 ・硬い・重い・危ない商品は高いところに置かない商品レイアウト法に徹する。
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