発震行動:街中編          ヤルデア研究所 伊東義高

     

前提条件:土地…東京都新宿…関東ローム層。ビル繁華街、交通量非常に多い (津波・崖崩れ・液状化現象などは起きない地勢・地形といえる)  建物…中高層ビル:多くは鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造・木造 (新旧・大小・強弱…混在。雑居ビル・相互密着〜延焼危険)  人々…事業従事者・居住者・路上住人・買い物遊興者・通行者…        (老若男女、土地者・よそ者・外国人。高い人口密度・薄い人間関係)      時期…200I年4月10日(土)、午後10時30分。不夜城真っ盛り (店内顧客・路上歩行者・自動車運転者…どこも混雑している時間)  地震…突然の直下型大地震、震度6(300ガル)約50秒間       (老朽・不良ビルは損壊、外壁・看板等落下、道路は陥没隆起…) 酔客(A):大手企業の新入社員で、今日は職場の歓迎コンパの流れである。大学生時代 は運動部で飲酒経験も多かったので、三次回目のバーでもまだ崩れていなかった。 ビールのコップを飲もうとしたときに椅子ごと突き上げるような衝撃で、鼻の奥 までビ−ルを浴び、むせった。テーブルはがたつき、飲み物食べ物は踊った。向 かいの先輩は立ち上がり、隣のホステスは悲鳴を上げた。棚のリザーブ洋酒が舞 い落ちバーテンダーは大慌てだった。  「テーブルに潜れ!」斜め前の課長が叫んだ。彼は何も考えることもなく、言 われたままに小さなテーブルの下に潜った。悲鳴を上げたホステスも潜ってきて、 互いに手を握り合った。店内の客もざわざわと潜りだした。ビルのきしむ音・店 内の物の当たる音・落ちる音はますます激しくなった。そのとき照明が消えた。 衝撃音は続き恐怖は増大した。    やがて揺れは収まった。真っ暗闇の中で互いに名を呼び合い、安全を確認しあ った。幸い店内に大怪我がないようだった。バーテンダーが懐中電灯をつけて店 内を照らした。ほっとした空気の中で、気分が悪くなって嘔吐をする女性もいた。  通りのほうではなにやら騒がしいようだ。誰言うともなく、足元を探りながら 外に出た。店の入り口ドアの上で、青く健気に光る非常灯が頼もしかった。 歩行者(A):地方から親戚の法事で上京中の熟年夫婦である。JR新宿駅を出て北の歌舞伎 町方向に向かって路地を歩きながら、夜の新宿を観光中だった。突然、膝が折れ るような衝撃を感じ轟音を聞いた。グラグラッ、ガタンゴトン、ギギ〜ッ…何が おきたのか分らなかったが、「地震だぁ〜」という声を聞いて我に返った。夫婦 は抱き合いながら辺りを見た。何かが割れる音、何かが落ちる音、何かがぶっつ かる音…ちらつく照明の中で人が戸惑っていた。  ガッチャン……何かが目の前に落ちてきた。咄嗟に二人はそばのビルの庇に駆 け寄った。それを待っていたように看板らしいものが落ちてきて砕け散った。街 中の明かりが消えた。激しい揺れは断続した。人の悲鳴が聞こえた。遠くで自動 車の衝突したような音がした。二人は声もなく抱き合っていた。  幸い彼らはかすり傷一つしないで済んだ。小さな明かりが点滅点在する不気味 な闇の大都会に泣き声・呼び声・怒鳴り声がこだましていた。二人はその場に留 まって、しばらくあたりの様子を伺っていた。「これかどうします?」「どうし ようかねえ…」「……」通信手段も交通手段も持たない夫婦は困った。 運転者(A):彼女は新宿の近くの原宿のアパートに住む中年独身のOLである。新宿での 用を終えて、今帰ろうとして伊勢丹横の大通りをマイカーで通行中であった。ガ クンガクン…何かに乗り上げたような衝撃を感じた。やがて車は上下左右に震え た。視界 は揺れ、路面は波打ち、聞いたことない轟音がした。  「何?これ…」アクセル、ブレーキを踏むのでもなく、ハンドルを握り締めな がら全身硬直していた。車は余勢でふらつきながら進んでいる。前の車の姿が迫 ってきて慌ててブレーキを強く踏み込んだ。キキ〜と車は制動されたが、左斜め に向かいながら進み、道路わきの電柱に当たって止まった。    辺りを見ると、道路を走る車はまさに「右往左往」していた。中には彼女のよ うにぶっつかるものもあった。街の灯が消え、ヘッドライトが狂ったようにうご めいていた。そのとき対向車が曲がりながら彼女の車に向かって突っ込んできて、 寸前で止まった。彼女は慌てて、そのまま車外に逃れ出て歩道に向かった。歩道 には黒い人影がわめきながら歩き回っていた。何かが落ちてきて彼女の肩に当た った。  大地の揺れが収まっても、彼女の動悸は収まらなかった。ようやく地震だと気 付いた。しばらくして自分のアパートのことが気になった。車に戻り、通い慣れ ている大通りを原宿に向かって進行しだした。交差点の信号は消えていて、自動 車の群れは各自判断で通行していた。車同士がジャムして動けない塊となってい るものもあった。怒号悲鳴が聞かれた。彼女はそんな混雑を強行突破してなおも 南下して行った。路面にはいろいろなものが散乱していてまともに走れない。し ばらく行くと、路面に亀裂や隆起陥没があって立ち往生する自動車が増えて、走 行不能になった。彼女は車を左に寄せて停車し、ドアをロックしてキーを持って 歩き出した。 行動診断・家庭や職場のように熟知している場所以外でも、地震には保身第一である。 ・バーであれ、劇場であれ、店舗であれ身を隠せる物の下に潜ることである。  (机・テーブルがなければ、家具の横<前は厳禁>などに蹲り、頭を守る) ・女性がいる時は悲鳴がパニックを起こし易いので、男性が大声で指示する。 ・熟知していない場所では、本震後の予想が出来ないので避難が上策である。 ・街中歩行中の地震で最も警戒するものは上からの落下物と交通事故である。  (代表的落下物はビル街では看板・外壁材・窓硝子、住宅街では屋根瓦)  (落下物の飛来範囲は建物の高さと同じ距離だから、道路中央も危険域) ・落下物を避けるために、最寄のビルの軒下に身を寄せるのは良策といえる。  (老朽ビルや手抜き工事ビルは倒壊危険があるが、咄嗟には分からない)  (妄りに車道に出ると狂乱した自動車等による交通事故に捲き込まれる) ・自動車運転中の三大危険は「路面破損」「相互衝突」「器物落下」であろう。  (路面の下部構造によっては亀裂・段差・隆起・陥没・噴水などの異常)  (路面は単純な横揺れではなく波のようにうねるのでブレーキが片利き)  (うねる路面で急ブレーキをかけると車輪の路面接触次第でスピンする)     (地震で狂乱した運転手は我先に逃げようと無理な運転で事故を起こす)  (ビル街などではフロント硝子に看板・壁材・硝子などが落下してくる) ・車を左に寄せ、エンジンを切り、キーを残し、扉を閉めて徒歩避難をする。  (キーを持ち去ると、消防車・救急車などのための車両移動ができない)  (悪者がこれをよいことにして車上荒らしや自動車盗みをするが諦める)

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